クールな准教授は密かに彼女を溺愛する
思っていた様な人だ。
先生は陽だまりの様な暖かい人。

大学を辞めなくて良かった。

ありがとうお父さん、私頑張るよ。
心の中で父に誓う。

実は、大学に編入出来たのは父が亡くなって保険金が入ったからだった。

本当は生活費に充てるべきなのかもしれない。田舎には母と高校生の妹もいる。まだまだお金は入り用だ。

母は専業主婦だった為、これから働きに出るには時間がかかるだろうし、
今から正社員として働くには就職先が難しいと思う。
だから、私が本当は大学を辞めて働くべきだと思っていた。

でも、父が遺言のように大学に行けと言ってくれたから、今ここに居る。


「住所が、ここから少し遠いですね。
通学は電車ですか?」

「はい。自転車が届くまでは電車です。」

「えっ⁉︎

ここから自転車で通おうと思ったら随分かかりますよ!」
びっくりして先生がこちらを向く。

「多分、大丈夫です。

短大ではずっと自転車で通ってましたし、慣れてますから。」

「…田舎道を走るのとは訳が違うと思います。」
心配してくれているのだろうか?
先生が腕を組んで何か考えている。
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