クールな准教授は密かに彼女を溺愛する
紗奈はとりあえず、1番隅の1番下から始める事にする。
タブレットの写真と照らし合わせてみる。

「あっ、
服が汚れるといけないので、何か下に敷く物取って来ます。」
北原先生がおもむろに言う。

「大丈夫です。
先生はご飯食べてて下さい。
私の事は気にしないで下さい。」

今日の服装は友達の優衣にもらった白地に小花が散った長めのワンピースだったから、心配されたのかもしれない。

明日からは服装も考えてお手伝いに来なくちゃと紗奈は思う。

紗奈がしゃがんで作業をしていると、食べ終わった要がどこからか一畳ほどの大きさの藁半紙を持って来て、紗奈の近くに敷き出す。

「適当な物が無かったのでこれで我慢して下さい。」

紗奈は心配になって裏を見る。
ラフスケッチやら構図やら設計図やパースがが貼られていた。
「えっ!これは何かの展示物ですか?」
驚いて、紗奈が聞く。

「去年、学祭に使った物です。
自分の所有物ですし、大き過ぎて処分に困っていた物なので気にせず使って下さい。」

「ダメです。
先生の設計図ですよね?パースも全部先生が書いた物ですか?」

「パネルにする為のラフスケッチにすぎません。完成したパネルはちゃんと取ってありますから。」

変な所で、可愛く頑固だなぁと要は思う。

困り顔でしばらく藁半紙を紗奈は見ている。

「これ、私に頂けませんか?
先生の手書きのラフスケッチ欲しいです。」
そう言ってせっかく広げたのにくるくると巻いてしまう。

「それはたかが下書きですよ?
ただのゴミです。あげるには恥ずかしいくらいの代物なので。」

要は迷い、困る。

「…ごめんなさい。
もらうのは困りますよね。
1人でこっそり見たいだけなんですど…。」
小さな声で謝り、俯く。

「あの、今日は服装を間違って来てしまったので…
下からじゃ無くて上の段からやります。 
そしたら敷物要らないです…」

ちょっとでも作業を進めなくてはと、 
紗奈は上の棚から始める。

どうしよう。先生を困らせてしまった。
きっと呆れられてるはず。

私、言うこと聞かない扱い難い生徒だって思われちゃったかな。泣きたい気分になる。

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