クールな御曹司の溺愛ペット【続編完結しました】

「あ、あ、あ、あのぉっ、待ってください!」

「どうした?」

「あの、えっと、……そう、お風呂!ここのお宿、お風呂が売りだって言ってました。ほら、二十四時までしか開いてないし。先にお風呂堪能したいなぁ、なんて」

「……そういうことなら」

千咲のお願いなら仕方がない。
部屋に常備されている色浴衣も確認してある。
淡い桃色の生地に橙色の帯はさぞかし千咲に似合うだろう。
うん、悪くない。むしろいい。

「湯上りで浴衣の千咲はそそるな」

口走れば、枕を投げつけられた。
至って健全だと思うのだが。
千咲は男というものをわかっていない。

一人お湯に浸かると少し冷静になった。
自分が少々浮かれている気がして判断力が鈍っている。

このまま千咲を抱いてしまってもいいものか。
迫ればきっと千咲は受け入れてくれるだろう。
だが彼女の性格上、多少親に嘘をついて宿泊している手前、健全でありたいかもしれない。
もし抱いてしまったら、罪悪感を持たせることになるかもしれない。
そんなことでは本末転倒だ。

悩みながら部屋へ戻ると、千咲はまだ戻っていなかった。


布団に転がりながら再度悩む。

と、胸に当たる衝撃でふと目を開ける。
部屋は薄暗く、いつの間にか寝てしまっていたようだ。

先ほどの衝撃はどうやら千咲が転がってきたから。
表情は見えず、規則的な寝息が聞こえるだけ。

可愛い。
これはぜひ寝顔も拝みたい。

そんなことを思いながら、再び眠りの世界へ誘われていった。
< 130 / 163 >

この作品をシェア

pagetop