クールな御曹司の溺愛ペット【続編完結しました】

ふいに携帯電話が鳴り、私はパソコンの手を止めて通話ボタンを押した。

「はい、片山で……」

名乗っている途中で時東さんの緊迫した声が聞こえてくる。

「片山さん?十五時からのお客様、どこにお連れしたの?」

「えっと、305会議室ですけど……」

「そういうことか。あのね、503会議室の間違いよ」

「えっ?!」

慌ててスケジュールを確認するが、そこには305会議室と登録されている。併せて会議室予約を確認すれば、そちらは503会議室となっていた。

「す、すみませんっ!登録ミスしちゃったみたいで……あの、すぐ行きます!」

「私が今向かってるからいいわ。あなたは副社長へ連絡しておいて。待ってると思うから」

「は、はいっっっ!」

身体中の血の気が一気に引いていくのがわかる。震える指で一成さんの連絡先を表示させる。ワンコールの後すぐに「はい」と低い声が聞こえた。

「片山です。すみません、十五時からのお客様を間違った会議室にお連れしてしまってっ」

「……それで?」

「あ、はい。今、時東さんがそちらにお連れしますので……」

「そうか、わかった」

「あの、本当にすみませんでした」

謝罪の言葉の途中で通話は終了し、耳にはツーツーという無機質な音だけが響いた。

どうしよう。
ミスをしてしまった。
バクンバクンと心臓の音が聞こえるかのように脈打ち、背中には冷たい汗が流れてくる。

お客様を間違った場所に案内したどころか、別の場所で一成さんも放置。しかも時東さんに指摘されるまで気づかないばかりか時東さんを走らせてしまうなんて。

それに一成さんの冷たい声。
あれは完全に怒っていた。

「……うわぁぁ」

私はパソコンを前にして頭を抱える。
もうこの世の終わりかのような気持ちになった。
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