恋がはじまる日
 ああ、そういえばさっき、盛大に転んでたか。


 思わず立ち上がっていた俺は、気が付けば彼女のもとへと足を向けていた。


 近寄ると、彼女はいつも驚いたように俺を見る。


「藤宮くん!」


 なんだかんだ面白いやつだと思うのは、あいつ以来かもしれない。

 佐藤と三浦は見ていて飽きない。いつかきっと、俺の知らないところで二人の関係は変わっていくのだろう。


 もうとっくに気が付いていたんだ。ただ目を背けてきただけで。

 俺はこの気持ちを伝えることは、きっとない。

 それでも、彼女の傍にいたいと願ってしまう。彼女の気持ちを大事にしたいのに。


 気が付かないうちに、彼女の存在は俺の中で大きくなっていた。


 今の俺を知ったら、柴崎はなんと言うだろうか。



 素直で明るくてお人よしで、そそっかしいのになんでも一人で頑張ろうとする。努力家でいつも笑顔の彼女。


 そんな彼女を、愛しいと思っている俺を。


< 119 / 165 >

この作品をシェア

pagetop