恋がはじまる日

「佐藤が幸せで、毎日笑っていられるなら、それでいいと思ってた。そこに俺がいなくても。でもやっぱりあきらめきれなかった。ま、佐藤がきっかけを作ってくれたわけだけど。悪いな、かっこわるくて」


 私はふるふるとかぶりを振る。


 手元のココアを見つめる。


 嬉しさがまたじわじわと込み上げてくる。


 そんなふうに思ってくれてたんだ。ああ、本当に両想いになれたんだ。


 嬉しくてまた泣きそうになった。


 好きな人に出会えて、その人と両想いになる。そんな奇跡みたいなこと、本当にあるんだね。


 頑張ってよかった。伝えてよかった。




 夕陽が暮れていくのをながめながら、私達は少しずつお互いの話をした。


 好き嫌いがほとんどないこと、お互い甘いものが好きなこと。藤宮くんにはお姉さんがいること、好きな教科苦手な教科、連絡先もやっと交換した。


 まだまだ知らないことがたくさんある。これからゆっくり、一緒に知っていこう。



 私達の恋は、ようやく動き出したのだから。

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