恋がはじまる日



 四月。


 新学期。


 桜の花びらが舞い散る校門をくぐり、私達は高校三年生になった。


 

 去年の春。桜吹雪が綺麗なその日、私と藤宮くんは出会った。


 今その彼は隣で一緒にクラス替えの名簿を眺めている。更にその隣には、幼なじみの椿。


 その椿が明るく声を上げる。


「美音!あったよ!三年Ⅾ組!また同じクラスだ!」


 そう言ってⅮ組の名簿を指差す。


「本当?よかったー」


「十二年間同じクラスってすごくね?愛の力かなー!」


「お前、なに朝から馬鹿なこと言ってんだよ」


 そう右隣の椿を肘で小突く藤宮くん。


「藤宮、美音と付き合ってるからって、あんま調子乗るなよな」


「は?別に乗ってないけど?」


「つ、椿声大きいよ」


 私は真っ赤になりながらも、しーっと指を口元に当てる。


 そうなのだ、あの日告白をして、私達は互いの気持ちを伝え合い、めでたく付き合い始めることとなった。


 まだ好きな人と彼氏彼女になったということがむず痒く、私は慌てて話を戻した。


「ふ、藤宮くんは?クラスどこだった?」


 まさか離れ離れなんてことないよね?と私はドキドキしながら聞いたのだが、彼は淡々と「お前らと同じ」と答えた。


「よかったぁ」


 また同じ教室で一緒にいられるんだ。私はほっと胸をなでおろす。


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