恋がはじまる日

 藤宮くんをかっこいいと思っている女子はクラスに多い。話し掛けることはみんななかなかできないようだったけれど、ひっそりと人気があるようだ。


 藤宮くん、勉強も得意そうだし、スポーツもできるんだ。すごいな。そう素直に感心した。


 椿が藤宮くんにハイタッチを求めてスルーされ、文句を言っている。


 あの二人、いつの間に仲良くなったんだろう?

 藤宮くんって何を考えているのかわかりづらいんだよね。無口だし、感情が表情にあまり出ないタイプの人なのかもしれない。もう新学期のことは怒ってはいないとは思うけど。からかってきたり笑ったり、この前は意外な一面も見れたし。仲良くなったらそういう色んな顔が見れたりするのかな。


 試合を見ながらそんなことをぼんやりと思った。




「美音!」

 体育の授業が終わって更衣室に行こうとした時、椿に呼び止められた。

「私達先着替えてるね」と桜ちゃんと雪乃ちゃんは更衣室へと向かってしまう。


「美音、さっきはありがとな。応援してくれてただろ?」

「あーうん、恥ずかしくなかった?」

「全然!むしろすげー嬉しかった!」


 そう笑顔で答える椿の言葉に、私も嬉しくなる。


「よかった!椿かっこよかったよ、お疲れ様!」

「サンキュ、美音が応援してくれたら、なんだって頑張れる気がする!」

「大袈裟だなぁ」


 私達は並んで歩きながらお互いの更衣室へと向かった。

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