黒い龍は小さな華を溺愛する。
「沙羅の頭ん中からあいつらの記憶消してぇな」
私を抱きしめ、ため息をつきながらそんなことを言ってくれた。
「もう……常盤くんのおかげでだいぶ落ち着いたよ?」
「俺が落ち着かねーんだよ」
本当に優しいひと。
私の事をそんな風に思ってくれて、涙が出るくらい嬉しいんだ。
これが嘘でもいい。
心が満たされているのは本当だから。
今はまだもう少しこのままでいたい。
だから今度は私が常盤くんの役に立ちたいんだよ。
私は常盤くんを抱きしめる手に思いを込めながら、そんなことを考えていた。