黒い龍は小さな華を溺愛する。
その場から逃げるようにPCルームまで走った。
私のこと干渉してなにが楽しいの?
あんな人だったなんて思わなかったよ。
乱れた呼吸を整え、PCルームのドアを開けると紫藤くんが私の方を見て「よっ」と手を上げた。
「お世話になりますっ……今日は私の為に時間を割いていただき……」
「硬い硬い、真面目すぎー!とりあえずこっちに座って」
紫藤くんが笑いながら、目の前にあった丸椅子を指さした。
机には美容室で使うようなハサミや化粧品が沢山並べられている。
「これ全部紫藤くんのですか?」
「そう、うち美容室だから。親の影響もあって美容師になりたくてさ」
「すごい……」
この歳から自分のやりたいことを見つけて、夢を持ってるってすごいな……。
「夕晴は休んでた分のことで呼ばれてるみてーだから、あとで来るって」
常盤くんから連絡が来たのだろうか、スマホを見ながらそう言った。