総長様は可愛い姫を死ぬほど甘く溺愛したい。


桜十葉と友達になったのは、私と桜十葉がまだ幼い頃だった。

私たちは、この条聖学院に幼児部の頃から一緒に通っていた。

なんで桜十葉が忘れてしまっているのかは本当に分からない。だって私達は、本当に仲良しだったから。

あの日、また桜十葉に会えることをとても楽しみにしていた。でも、前とは違う不審な目を向けてきた桜十葉。どうして、そうなったのか。どうして、私のことを覚えていないのか。


「桜十葉は、……どうしてそうなっちゃったのかな…?」


少しでも気を抜くと、すぐに涙がこぼれそうになる。桜十葉の前では泣かないって決めたんだ。弱い私を、見せたくない。


「それは、…私にも分からない」


桜十葉は昔から、誰にだって優しくて、誰にだって真心で接することのできる子だった。そんな桜十葉は、今も真摯に答えてくれる。

桜十葉の方が、何がなんだか分からないだろうに、私が泣いてしまってはだめだ。桜十葉は、すごく優しい子だから自分の気持ちを押し殺してでも私を慰めてくれるだろう。


「私は、桜十葉が良ければだけど、……もう一度友達になりたいよ」


すごくすごく弱々しくて情けない声だった。臆病な私には、桜十葉がいないとだめなんだ。


「うん。それはもちろんだよ!でも、…」


でも……?

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