総長様は可愛い姫を死ぬほど甘く溺愛したい。
そう願った瞬間、肩を顔も知らない誰かに掴まれた。
「お前、“坂口 裕翔”と前一緒に居たよなぁ?あ?」
強い力で肩を掴まれ、逃げることが出来ない。
坊主頭の金髪男は大人のようで、私はその力の差に勝つことが出来ない。
「……いやっ!」
伸びてくる手に身を縮こまらせようとした瞬間。それは本当に一瞬だった。
「……、おい。俺の大事な子にその汚ぇ手で触ってんじゃねぇよ」
坊主頭の男はもう私の目の前にはいなかった。地面に倒れるようにして、鼻から血を出しているみたいだった。私を救ってくれた人に目を向けるとそこには、───
「ひ、裕翔さん……!?」
とても恐ろしい顔で坊主頭の男を睨みつけている裕翔さんがいた。その目はすべての光がなくなったように真っ黒だった。
感情が掴めないほどに血を這う冷たい声を発した裕翔さん。久しぶりに会った裕翔さんの横顔から目を話せなくなる。
だけど、裕翔さんはすぐに私の声に我に返ったように、私に顔を向けた。
「大丈夫だった?桜十葉……」
さっきとは違う、とても優しい顔と声。私はその姿に安心して、お礼を言った。
「ありがとうっ……」
そう言った瞬間、私の体が震えていたことに気づいた裕翔さんは、私を優しく抱き寄せて、強く強く抱きしめた。
「ほんと、……よかった。俺のせいで、ごめん……っ、」