総長様は可愛い姫を死ぬほど甘く溺愛したい。
うぅ、なんだか裕翔さんとっても怖いよ。声は静かなのになんだか見えない圧が凄くて私も一緒に凄んでしまう。
一条は顔を真っ青にして、ブンブンと頷いている。
「どうか!結城様夫婦には言わないでください!こんな失態はもう二度としないので。これだけは……」
「大丈ー夫だよ。俺、言わないから。ただそれは桜十葉の気持ち次第だよね?」
「は、はい……」
一条と裕翔さんの間に圧倒的なまでの権力差を感じて、私はゴクリと息を呑む。
裕翔さんがまだどんな立場の人なのかも知らないのに、その正体を知るまでもなく分かる。
この人を怒らせたら、絶対に命はない、ということが。
すごく落ち込んでいる一条が今度はとても可哀想になって私は思わず大きな声を出してしまった。
「一条っ!私はあなたが側近でいてくれて嬉しいの。確かに今日は怖い思いもしたけど、それでも私は一条がいい」
私の言葉に、一条の真っ青だった顔が子犬のように輝いた。私はそんな姿を見て思わず顔がほころんだ。しかも顔が良いから、単純すぎる私は何でも許してしまう。
本当に、悪い癖だ…。
「本当ですか!?私、桜十葉様の傍をお離れすると思うと生きた心地がしなくて……。私も桜十葉様を愛していますよ!」
「バカかよ……、ちっ…」
そう言って吐かれた裕翔の言葉は桜十葉と一条の耳には聞こえていなかった。