総長様は可愛い姫を死ぬほど甘く溺愛したい。
『俺たちが昔遊んだ公園に、桜十葉が居るから』
『本当にいいのかよ、兄貴』
『……っ。ああ、いいよ』
裕翔はきっと、俺がまだ桜十葉に対して馬鹿みたいに未練たらたらなことを見抜いている。それでも、裕翔は一切迷いのない瞳でこう言った。
『じゃあ、有り難くもらうからな。お前の彼女』
『もう、彼女じゃないよ…』
『はっ……!そうかよ』
裕翔は吐き捨てるようにそう言い、俺の横を通り抜けた。
『裕翔、最後に一つだけ伝えておきたいことがある』
『なんだよ』
『俺は、桜十葉の記憶を失わせる薬を飲ませた。でも、錠剤一つなんかで本当に効果が出るのかは分からない』
『…だから?』
裕翔が目を見張って、ごくり、と喉を大きく上下させる。
『裕翔、お前もするんだ。坂口組が開発した薬を、桜十葉に飲ませろ。桜十葉の中に俺が居たら、お前は幸せにはなれない』
俺の伝言に苦しそうに頷いた裕翔は、桜十葉の居る公園に走って向かって行った───。
ありがとう。桜十葉。
君と居られた日々は、信じられないくらいに幸せだったよ。
だから今度は、裕翔のことを幸せにしてあげて。
───バイバイ。俺の一番大切で死んでしまいそうなほど愛おしい、たった一人のお姫様。