総長様は可愛い姫を死ぬほど甘く溺愛したい。
裕翔くんと一緒に、裕希さんの家に来ていた。
実は、さっきからすごく緊張しているんだ。
「桜十葉、大丈夫?」
私の隣に座っている裕翔くんが心配そうな表情でそう言った。
「う、うん…。大丈夫」
そうだよ、大丈夫だ。裕希さんは、裕翔くんのお兄さんなんだから。でも、緊張とはまた別の感情が心の中で渦巻いている。
それは、気まずさだ。とにかく気まずすぎる。
昔のことを全部思い出してからというものあの日の裕希さんの表情が頭にこびりついて離れない。私を拐った裕希さんの、あの悲しそうな表情。
そして、裕翔くんの耳元で言っていた言葉たち。今、ようやく理解したんだ。
「桜十葉ちゃん。そんなに緊張しなくても別に取って食べたりしないから」
「……おい」
「ほら、ね?ここに桜十葉ちゃんの護衛もいるし、…」
「彼氏だ」
裕希さんが話しだした途端、急に不機嫌になった裕翔くんを私は不思議に思う。
「あー、はいはい…」
裕希さんはそんな裕翔くんに苦笑いしてから、私の方に向き直った。そんな裕希さんに私もごくりと喉を上下に揺らして、改まって姿勢を正す。
「桜十葉ちゃん。まずは、今日来てくれてありがとう。来てくれるなんて知らなかったからすごいびっくりしたよ」
「は、はい」
私は震える手を抑えながら裕希さんに相槌を打つ。