総長様は可愛い姫を死ぬほど甘く溺愛したい。


“あかりん”

朱鳥ちゃんが明梨ちゃんのことをそう呼ぶものだから、私と明梨ちゃんは目を見合わせて吹き出してしまった。

そんな私たちに朱鳥ちゃんは不思議そうに首を傾げていた。


「それよりも、さっきちょっと聞こえちゃったんだよねぇ〜。あかりん、彼氏が出来たんでしょー?」

「え、なんでそれを……っ」


そうだった。朱鳥ちゃんは怖いぐらいの地獄耳なんだ。

明梨ちゃんは頬を真っ赤に染めて、驚いている。


「真っ赤になったあ、可愛いね」


朱鳥ちゃんはそう言いながら、明梨ちゃんの頬をぷにっとつまむ。朱鳥ちゃんは、人と打ち解けるのがもの凄く速いんだ。

私も、入学式の日に朱鳥ちゃんに話しかけられてその明るさに助けられた。


「桜十葉、実はね……私、許嫁だった人と正式にお付き合いをすることになりました」


改まった口調で嬉しそうにそう言った朱鳥ちゃん。前にその許嫁のことで悩んでいた朱鳥ちゃんが、今はその人のことを笑顔で話している。

その事実がすごく嬉しかった。


「そうなんだ!すごく良かったね」

「何〜?朱鳥も彼氏いるんじゃーん!私をからかって、こんの〜!」

「あははっ、こしょばいよ〜!」


明梨ちゃんは朱鳥ちゃんを思いっきりくすぐる。私はそんな明梨ちゃんを楽しい気持ちいっぱいにくすぐった。


「ちょ、桜十葉やめてよー!あはははっ」


階段には、私たち三人の楽しそうな笑い声が響いていた。

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