総長様は可愛い姫を死ぬほど甘く溺愛したい。


私は無言のまま私の腕を引いて歩き続ける裕翔くんの背中を不安な気持ちで見つめていた。

いつもは私に合わせてゆっくり歩いてくれていたのに、今はどんどん速く進んで行ってしまう。掴まれた手が、すごく痛い。

校舎を出て、正門まで歩いた。そのまま正門を出て、裕翔くんの車が停められている人気のない所まで来た。


「乗って。早く」


いつもは私が車に乗るときにわざわざドアを開けてくれるのに、今日はしてくれなかった。それに勝手に傷つきながら、私は車に乗った。

だって、裕翔くんをこんなにも怒らせてしまったのは私のせいだもん。真陽くんの願いを拒否できなかった優柔不断な、私のせいだから……。

視界が滲む。ここで、泣いちゃだめだ。私は必死にそう思い、涙を流さないように努めた。

裕翔くんの車が走り出し、真っ直ぐに私たちの住む裕翔くんの家に向かっている。

ガリッガリッガリッガリッ───ッ!

横で運転している裕翔くんは、怖い顔でミントタブレットを永遠に噛み砕いている。

だ、大丈夫なのかな……?

私は、これから何を言われるのかな……。何を、されるのかな。

裕翔くんの家に着き、大きな門が開く。そしてその車を立派な車庫に入れた。

私は怖くて、体が全く動かなかった。裕翔くんは車から降りて、無表情で私の座る助手席の方まで来てドアを開けた。

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