総長様は可愛い姫を死ぬほど甘く溺愛したい。
(裕翔side)
桜十葉の親友たちと遊んだ遊園地からの帰り道。
桜十葉は泣き疲れて眠ってしまっていた。
今日は桜十葉の誕生日だから俺はそのお祝いがしたくて『ホテル・ビアンカ』に向かっている。
桜十葉と付き合い始めてもう三年の時が過ぎた。三年間、本当に沢山のことがあった。
俺は、本当は桜十葉から離れるつもりだったんだ。過去にあんな風に桜十葉を怖がらせて記憶を失わせてしまって、死ぬほど後悔した。
そして、俺のためにと桜十葉から兄貴の記憶を全て奪った。こんな俺は、絶対に隠し通したい。
ずっとそう思いながら桜十葉の隣りに居た。
でも、やっぱり俺には隠し通すことなんて出来なくて、桜十葉に対する罪悪感で押し潰されそうになった。桜十葉があの公園に居た日、思わず錯覚した。
桜十葉はこの公園を、俺と兄貴と桜十葉が幼い頃に1度だけ遊んだことがあった公園を思い出して、そこに来たと。
桜十葉に時間が必要だと言われた時、俺は軽く絶望した。桜十葉に初めて、手を振り払われたから。
二日間考えて、俺は桜十葉に自分の正体を話すことを決めたんだ。やっぱりここで過去の話をすることは、出来なかったけれど……。
俺の車の助手席で静かに眠る桜十葉の綺麗な黒髪を優しく撫でる。