総長様は可愛い姫を死ぬほど甘く溺愛したい。
そう言って優しく抱きしめてくれていたのは、お茶を淹れに行ってくれていたはずの坂口さん。
「さ、坂口……さんっ」
「裕翔、でしょ。ほら、呼んでごらん」
「うぅ…ひ、ひろと……さん」
「んー、まぁ今はそれでもいいか」
名前を言うのは恥ずかしすぎて思わず俯いた。さっきまで泣いていたはずなのに坂口……、裕翔さんに抱きしめられた恥ずかしさの方が勝ってしまっていた。
「女の子の泣き顔は大好きだけど、他の男のために泣く桜十葉の泣き顔なんて見たくない」
裕翔さんは不服そうに唇を尖らせて、不機嫌な声を出してそう言った。
そこには少し子供っぽさがあって、なんだか可愛い。
「う、ごめん……なさい」
「早く泣き止まないとキスするよ」
その言葉にまたもや固まってしまう。そ、そのキスなんて……。私は一生懸命涙を拭った。
「あーあ、泣き止んじゃったね。キスしたかったのに」
「ほ、他の男のために泣く泣き顔は好きじゃないって……、言ったじゃないですか」
おそらく今、私の顔は真っ赤っか。顔から蒸気が出てきそうなほどに赤くなっているのは自分でも分かった。
「そーだね。泣き止んでくれてよかったよ」
うぅ……。なんだかさっきから裕翔さんの手のひらの上で転がされる子供の気分。
「ほら、桜十葉は何が食べたい?」