総長様は可愛い姫を死ぬほど甘く溺愛したい。


一度だけ遊んだ子、かぁ……。それは女の子なのかな?

そうだったらちょっと嫌だな……。だってもしそうなら、裕翔くんは一度だけしか遊んでいない子のことを今までずっと、覚えていたということになる。


「ねぇ、桜十葉。もしさ、過去に桜十葉のこと傷つけた奴と一緒にいたいって思う?」


裕翔くんは真剣な顔で私を見つめていた。

その質問は私には難しいもので、直ぐには答えられなかったけれど、裕翔くんがとても真剣だったから私もちゃんと答えることにした。


「んー、どうだろ。自分を傷つけた相手とは一緒にいたくはない、……かな」


なぜ、裕翔くんがそんな質問をしてきたのか。

なぜ、もしもの話なのにこんなにも心臓が嫌な音を立てているのか。


「そっか、……そうだよね」


空気が重くなるのを感じた。でも、私は……


「でもね、例え過去に自分を傷つけた相手だったとしても自分が一緒に居たいって思えたら、私は一緒にいる事を選ぶと思う…」


裕翔くんはそれを聞き、驚いた表情で私を見つめていたけれど、今度は優しく笑った。


「そっか、……そうなんだ。聞けてよかった」


裕翔くんがそんな事を聞いてくる意図が分からない。裕翔くんがなぜ、そんなにも安心した顔で笑っているのかも分からない。

でも、少し分かった事がある。

お母さんがなぜ、裕翔くんと一緒にいなさいと言ってきた理由。

それはきっと、何がなんでも一緒にいなさい、そういう意味も込められていたと思うんだ。


「私、もし裕翔くんが昔私を傷つけていた相手だとしても、……ぜ、絶対好きになるし一緒にいる自信、あるよ」


なんでもない風に本心を言った私の言葉に、裕翔くんの心が泣いていた事になんか気づきもしなかったんだ。


「桜十葉、ちょっと俺の昔話、聞いてくれる?」

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