彼の結婚、私の今後。【短編】


「俺、結婚するわ」


なんてことない響きで、目の前の彼はそういった。串カツが美味しい店あるからと連れてこられたにぎやかな店。カウンターで二人並んでいつもどおり話していたら、いつもと同じような会話の仕方で。やや間を作ってしまって、私もきわめてい
つも通りの態度に持ち直してからビールを一息に煽る。

「一人で結婚はできないけど、あなた彼女できたの?」


毎週私とあって、いったいいつの間に。店員を呼び止めて、またビールくださいと頼んだ。


「最近、つい二か月前」


あぁ、とひとつ思い至ったことが初めてのドタキャンの日である。

美味しいところを探すというのを彼と六年程週一でやっているが、初めてのことだったと思う。彼と出会ったのは二十歳の大学生の頃だった。
同じサークルでの飲み会酒に潰されないまま、最後まで生き残ったのは彼だった。死屍累々に仲間が干からびているなか、唯一まともに会話できたとき彼とは同士だと思った。そして恋人になることもなく、六年。そして、何回も間違いを犯してもいる。
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