Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─
 私達が青い肌で生まれてきたら、2人での生活は、さらに苦しいものになっていただろう。
 今から向かうのは、祖父の元。私の……お爺ちゃん?
 祖父の話など、父からまったく聞かされたことはなかった。
 考えてみれば、渡された服は、質素だが清潔で動きやすいし、今も、馬車の中で手枷などは嵌められていない。
 縄で縛られて連れてこられた時とは、大違いだった。
 敵中にいたとはいえ、王様の孫ゆえの待遇なのかもしれないと思えた。
 祖父とは、どんな人なのか、怖くもあり、少しだけ興味もわいてきていた。
 気が付くと、レバスの城下町は、もう見えなくなっていた。



 馬車は、途中、何度か宿場町を経由した。
 その時には、1人部屋を与えられ、夜はベッドで眠ることができた。
 一応、監視らしきものはついているようだったが、何やら、丁重に扱われている雰囲気は伝わってきた。
 やがて、馬車は山道に入る。
 ここから先は、もう宿場町はないようで、毛布を渡され、馬車の中で眠った。
 馬車には屋根もついていて、ふかふかのベッドほどとはいかなくとも、充分快適に眠ることができた。
 そして、山脈を越えたところで、馬車から見える景色の向こうに、遂に、岩山に囲まれた巨大な城が姿を現した。

「あの場所が……魔王の……?」
「そうだ」

 戦の知識など皆無に等しい私だったが、それが、遠めに見ても、とても堅牢で、攻められにくい作りだということは、なんとなく理解できた。
 大勢の兵士を率いたまま、この山を越え、あの城を攻め落とすなど、その時は、とても現実的とは思えなかった。
 兄は、本当にあそこまで攻め上るつもりなのだろうか?
 山道は、ここからの下りも険しい。
 到着には、もうしばらくかかりそうだった。
 下りの道に入ると、あちこちに小さな家や集落なども見え始めた。
 この辺りから、もう魔王領の中なのだろう。
 周辺は、夜でもないのに、人影は殆どなく、静まり返っていた。

「この辺りは、土地が痩せていて作物があまり育たない」

 外を眺めている私に、彼が説明してくれた。

「いずれは、この土地を捨てて、他へ移住しないと、この国に未来はない。魔王様はそうおっしゃっていた」

 見える山々は、殆ど岩肌で、土が少なかった。
 彼らはこんな土地で、ずっと暮らしてきたのか。
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