Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─
「魔王様も身内には甘いよなあ。スーディの裏切りで魔王様ご自身が負傷して、退却せざるをえなくなったのによ」

 初めて聞く話だった。
 父は、魔王領の人たちにも激しく恨まれているのだと感じた。

「お前も、そんなチンタラやってても訓練になんねえだろ? 俺が手伝ってやるよ」

 言うなり、彼は腰の剣を引き抜いた。
 それは訓練用の剣ではなく、真剣だった。
 それを躊躇いなく、こちらに振り下ろす。

「ひっ!?」

 私は持っていた短剣で、なんとかそれを弾いた。
 後ろにのけぞった後、倒れないよう踏ん張る。
 なんなの、この人!?
 戸惑う私に、彼は容赦なく追い打ちをかけてきた。
 2撃目も何とか弾く。
 受け損なえば、怪我ではすまない。
 だが相手は、そんなことは気にも留めていないようだった。
 もしネモから訓練を受けていなければ、最初の一撃の時点でとっくに短剣を弾き飛ばされていたはずだったが、この時の私はそんなことには気づかなかった。

「おらおら、どうした? 反撃してみろよ!」

 身を守るので精一杯なのだ。
 反撃する余裕などあるはずがない。
 攻撃を受け止めるたびに、腕が痺れ、追い詰められていく。
 もう何度、それを受け止めたかわからない。
 最後の一撃を受けて城壁に叩きつけられた私は、遂に短剣を落とし、その場に倒れこんだ。

「弱え、弱すぎんぞ!」

 倒れたままでいると、今度は腹を蹴られた。
 激しくむせ返ると、次は顔を踏んづけられた。

「立てよ! 寝るのは早えぞ! おい」

 そんな風にされたら、立ちたくても立ち上がれない。
 苦しむ私の顔を、彼は何度も踏みつけた。
 殺すつもりはないのだろう。
 この人は、ただ私をいたぶって楽しんでいる。
 私は踏みつけられながら、兄の暴力に耐えていた日々を思い出してしまっていた。
 あの暴力から逃れて1年以上が経っている。
 無縁でいたかったあの場所に、結局戻ってきてしまった。
 ここ魔王領にも、私の居場所なんてなかった。
 どこにいてもこんな目に遭うのなら、どうせ逃れられないのなら、もういっそ殺してほしいと、そう思った。

「何をしている!」

 声のした方を見ると、ネモが立っていた。
 男の方もそれに気づいて、そちらを振り向く。

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