身代わり少女は主人を慕う
少しでも将吾様の気持ちが、和むように、私は将吾様を庭に連れて来た。

「あっ、これこれ。昨日から思ってんですけど、花びらが大きくて綺麗じゃないですか?」

「うた……」

「あっ、これも。奥にもある。本当に綺麗な庭ですよね。」

私がクルッと振り向いた時だ。

「うた。」

将吾様は、背中から抱きしめてくれた。


「家族があの日に殺されたって、どうして言わなかった?」

「どうしてって……言っても……家族誰一人、帰って来ないし……私一人で、頑張るしか……」

すると将吾様は、益々私の体を、強く抱きしめてくれた。

「うたは、もう一人じゃないよ。」

「将吾様……」

「悲しかっただろうに。苦しかっただろうに。辛かっただろうに。俺の前では、そう言うところ、見せてよ。」
< 65 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop