身代わり少女は主人を慕う
「明日から、そう呼べばいいよ。」

「はい。」

私と将吾様は、顔を見合わせて、笑い合った。

この瞬間が、私は好き。


「あの、今日も庭に出て、いいですか?」

「ああ、いいよ。」

もっと好きな瞬間がある。

それは、将吾様と一緒に、庭を散歩する事だ。


「今日も咲いているな。うたの好きな花。」

「はい。」

そう返事をして、花を見ている振りをして、将吾様を見ている。

誰にも気づかれたくない。

二人だけの時間。


次の瞬間だった。

草の影が、ガサガサッと揺れた。

「うた、こっちへ。」

将吾様が、私を抱き寄せた。

「何だろう。猫かな。」

だとしたら、猫に感謝だ。

そのお陰で、将吾様の腕の中にいるんだから。

「大丈夫?うた。」

「はい。助かりました。」


でもこの時私は、新たな困難が待っているなんて、知らなかったんだ。
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