*夜桜の約束* ―春―
「そ……そっくり!」

「「双子ですから」」

 見上げた驚愕の眼が右へ左へと泳いでしまう。

 そんな暮を見下ろした二人はつい顔を見合わせて、含み笑いのような笑みを(こぼ)した。

「え……?」

「あ、申し訳ございません、クレ様。お嬢様の反応と全く同じでございましたので、何だか懐かしくなってしまいまして……」

 紅茶を差し出した女性はそう言って笑ったが、その中には不思議と淋しさも垣間見えた。

「お嬢様ってモモのことですよね? どうもこちらが把握している話とは噛み合ってこないんですが、お互い情報交換してみませんか?」

 尚もケーキを食べ続けながら、暮は二人に状況を知り得るための打診を試みた。

 二人は今一度顔を見合わせ、やがて紅茶の女性とは別の──こちらが花純なのだが──が一歩近付き、暮の耳元に小声で(ささや)いた。

「他の団員の皆様には一切他言されませぬならば……」

 思いがけず近寄った彼女の淡い香水がいやに(つや)っぽい。

 一瞬頬を赤らめた暮はその条件を呑むことに応じ、唇の端に付いたクリームを(ひと)()め、深く(うなず)いた──。


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