*夜桜の約束* ―春―
 やがて消灯し厳重に施錠されたテントを後にして、打診しておいた営業車の鍵をマネージャーから受け取った。

 激しく降り続く雨の中、関係者専用の駐車場へ向かったが、

「は……?」

 そこには人だかりらしき黒い塊が立っていた。

「遅いぞ、凪徒」

「え?」

 真ん中から聞こえてきたのは暮の声だ。

「おれ達も行くぞー」

 そうして一台のヘッドライトが点灯し、(ほとん)どと思えるくらいの団員の集まりが照らし出された。

「なっ……えぇっ!?」

「あんまりカッコいいところ持っていくなよな~、少しは手伝わせろ」

 左側からの光で出現した皆の顔は、全員凪徒をニヤリと見つめている。

「カッコいいって……いや、待てよ。明日も公演あるんだぞ!」

 反面凪徒は焦っていた。協力は嬉しいが、共倒れしたら意味がない。


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