眠りにつくまで






引っ越しの時期は決まり次第連絡すること、年明けはご両親が4日には仕事始めらしいので1月中には一度光里と二人で訪問することを約束して来た道を戻る…車に乗り込む間際に父親に言われたことを思い出しながら運転する。

「運転には十分気をつけて下さい。私も昨日の帰りは注意して…さらに注意して運転していました。光里の周りで事故が起これば…今度は光里がもたない…そう思っています」

その通りだ。都内に入る前に一度車を止めて光里に電話をかける。

‘はい、聖さん?’
「光里、今どこ?」
‘聖さんのマンションのドアを入ったところ。無事開けられました’

鍵があるんだから当たり前なのだが、光里にすれば一人で来て開けるというのが初めてだ。

「大冒険だな」
‘そう…暖房つけまーす’
「全部つけろよ。どの部屋の空気も壁も暖まってこそ冷えないんだから」
‘うーん…聖さんお仕事は?’
「あと1時間かからないか…1時くらいに帰る。昼飯買って帰ろうか?」
‘冷蔵庫いっぱいなんでしょ?何か作っておくよ’
「嬉しい。光里、ありがとう」

帰ったら今日ご両親に会ったことを光里に話そう。自然に緩む頬を一撫でしてからハンドルを握り直し、俺たち二人の部屋を目指した。
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