眠りにつくまで
そのお兄ちゃんが言う夜にはもうすっかり本格的に陣痛が始まっていたが…始まっただけでなかなか進まないんだね…痛いっ…
「光里、これは耐えるしかないから頑張って耐えなさい」
お父さんと一緒に病院へ来たお母さんが私に言い、そのあと聖さんに言った。
「聖さん、まだだと思うから一度家へ戻って着替えてきたらどうかしら?スーツのままじゃ明日まで掛かりそうな長丁場に大変でしょ?」
「そうします。シャワーして着替えて来ます。光里、急いで戻るから」
「急ぐのはダメっ…」
「そうだね。お母さんもいてくれるから安全運転で戻る」
「…うん」
こうして二人のお母さんも入れ替わりながら私の腰を擦り、自分たちもおにぎりをかじり…夜が明け明るくなってから私はやっと分娩室へ入った。
「順調ですね。14時間半…平均的ですよ。あと少しで赤ちゃんに会えますからね、三鷹さん」
先生…あと少しって…2時間のことを言わないで…朝食も準備されたが食べられるはずがないと心の中でぶつぶつ言いながら出る汗を聖さんが拭ってくれる。
「光里…本当にもうすぐだよ。光里が頑張ってるから赤ちゃんも頑張ってる」
「…うんっ…ったぃ…」
「三鷹さーん、そろそろですよ。ゆっくり息を吐いてみてー練習」
ふーっ…ふーっ
「上手ですよー」