Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
「そろそろ良くね?」

「決めるのは、私」

「そうやって引き伸ばしてる間に、俺が誰かに取られるとか思わねぇの?」

「そうなったらそうなったで、私の事別に本気で好きじゃなかったんだなって解釈するだけだから」

「うわっ、モテなそうな屁理屈」

「うっさいわ」


私は皿を洗いながら、カオルの言葉を受け流す。

最後の一枚を私が洗い終えた瞬間、フワリと石けんの匂いがして、気付くとカオルに後ろから抱き締められる。


「ちょっと…!」


奈都がお風呂に入っていることをいいことに、この男は…!


「綺月」


耳元で話すカオルの息がくすぐったくて、私は変な声が出そうになり息を止める。


「全部ちゃんとしたら、潔く俺と付き合えよ」


そう言って、充電するかのようにまた強く抱き締めると、暫くしてから名残惜しそうに私から離れる。


「あーマジでしんど」


カオルはブツブツと不満を垂れながら自分の部屋に入って行った。

私はやっと息を吸って吐く。

カオルは前も今もちゃんとやっている。

私がこうやって引き伸ばすのは、まだ決心がつかないからだ。

カオルのものになる決心が。
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