カッコウ ~改訂版

 孝明との関係は順調に続いていた。週末、私は孝明のアパートに泊まる。孝明は穏やかな愛で私を包み、私も孝明との時間に癒されていた。
 それなのに、私は茂樹からの誘いを断れない。茂樹から連絡がくると私は会いに行ってしまう。茂樹との関係は体だけなのに。体だけだからこそ、離れることができない。あの日からまた、私は茂樹との関係を続けていた。
 孝明を騙しているという思いが、私に強い歓びを与える。私は平凡ではないという罪悪感と優越感に、私は夢中になっていた。
 「みどり、就職したらここに住めば?」年が明けてしばらく経った頃、孝明に言われて
 「ここ、独身寮でしょう。会社に見つかったらまずいんじゃない。」孝明の提案は魅力的だけど私は躊躇する。孝明と暮らせば、少ない収入でも家を出られる。でも、もう茂樹とは会えないだろう。
 「入籍するまでは独身だから。そういう人結構いるよ。」孝明の言葉に驚きながら、私は考えていた。いい機会かもしれない。今度こそ、本当に茂樹と別れよう。いつまでも、こんなことは続かない。
 「本当に大丈夫?」私が聞き返すと、孝明は笑顔で頷く。そして、
 「でも、みどりのご両親にちゃんと言わないとね。」少し照れて言う孝明。孝明の真剣な言葉が私をときめかせる。孝明は私との結婚を考えている。
 「それ、プロポーズ?」孝明を甘く見上げて聞くと、
 「もっと稼げるようになってからだけどね。」と孝明は照れた顔で続けた。
 「ありがとう。」と私は震える声で言う。
 都市銀行に勤務する孝明。結婚できたら最高だと私は思う。収入も多く、社会的な信用もある。しかも孝明は穏やかで優しい性格だから。
 孝明が私との結婚を考えていると思うことで、私の胸は熱くなる。もう茂樹とは会わない、絶対に。孝明を手放したくないから。私は今度こそ本当に決心をしていた。
 





 
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