カッコウ ~改訂版

 麻美と結婚してまもなく2年という春。俺のスマホに1枚の写真が送られてきた。みどりの弟が送信してくれた写真。悠翔の入学式。大翔と悠翔が並んでいる写真。二人共、大きくなって、男の子らしくなっていた。
 離婚の手続きが終わった時、みどりとの連絡先は消し合った。でもみどりの弟の連絡先は消す理由もなく、そのままになっていた。
 「麻美、ちょっとおいで。」俺は夕食の片付けをしていた麻美を呼ぶ。去年生まれたひとみを抱いた俺は、まもなく1才になるひとみの可愛さに夢中だった。
 「なあに。」隣に腰掛けた麻美に、俺はスマホの写真を見せた。
 「タカの子供さん?」麻美は画面を伸ばして子供達の顔を見る。
 「うん。元妻の弟が送ってくれた。」俺は正直に話した。
 「ねえ、この子、ひとみに似ているね。」麻美は悠翔を指して言う。
 「そう思う?」確かに輪郭や唇が少し似ている。麻美からスマホを受取り
俺は麻美の前で返信をした。
 《大きくなったね。》
 《俺、再婚しました》と。
 「ひとみの写真、送ってもいい?」俺が麻美に聞くと、麻美は笑顔で頷いた。最近のひとみの可愛い写真を選び、送信する。
 《よかった。お幸せに》とみどりの弟から返信がきた。
 大翔と悠翔の写真は、俺を少し切なくさせた。二人は俺のことを覚えているだろうか。あのままの生活が続いていたら、今頃どうしていたのだろう。
 でも、俺は子供達と別の道を選んだ。そして今、俺の側には麻美とひとみがいる。俺がすべきことは、今の家族を愛して、努力することだから。
 
 ひとみを寝かせた後で、麻美は
 「子供さんの写真見て、寂しくなったでしょう。」と俺に言った。
 「少しね。何もしてあげられないから。」俺は正直に答えた。麻美が平気なわけはないと思うけど。共有したいから。今の俺の思いを。そして麻美がどんな気持ちなのかも知りたい。
 「麻美、写真見るの嫌だった?」俺が聞くと麻美は首を振り、
 「タカが一人で見ていたら、頭にくるよ。」と笑った。麻美の素直な言葉に、俺は苦笑する。
 「今タカが寂しいのとか、話してくれるから安心する。そういうのをタカが一人で考えていたら、もっとムカつくよ。」と麻美は笑顔で言った。
 「麻美ってすごいな。心が大きいよ。」俺は素直な気持ちで言った。
 「まあね。自信があるから。」麻美は顎を上げて言う。
 「何の自信?」俺が聞くと、
 「タカに愛されている自信でしょう。」と麻美は頬を膨らませた。俺はまた声を出して笑ってしまう。いつも麻美に癒されていると思う。
 「ありがとう。麻美は最高だよ。」俺は明るく言う。
 「タカはさ、命をあげたから。何もしてあげてないわけじゃないから。大丈夫だよ。」と麻美は真っ直ぐ俺を見て言った。麻美の発想にはいつも驚かされる。俺が頷くと、
 「カッコウって知っている?他の鳥の巣に卵を産むの。私、最初、何てひどい鳥って思ったのね。でも、そこまで命を大切にするってすごいよね。」静かに麻美は、話し続けた。
 「前の奥さんも、命を大切にする人だから大丈夫だよ。子供さん、ちゃんと成長すると思うよ。タカは命を守ってあげたから。あとは自分で切り開いていくよ。」麻美の言葉に俺は胸が熱くなった。
 「ありがとう。俺、麻美と結婚できて良かった。」俺が素直に言うと
 「まあね。私、自信があるから。」と麻美はさっきと同じ言葉を繰り返す。
 「私以上にタカのこと愛している人、いないって。」と続けた。俺はやっぱり笑ってしまう。嬉しくて、心が温かくて。麻美と出会えたことで、俺の悲しみは消えた。
 
 麻美は以前“過去も全部孝明だから”と言った。過去があったから今がある。過去の悲しみがあるから、今の幸せに感謝できる。そんな風に思わせてくれる麻美を、俺は愛していた。
 「そろそろ寝ようか。ひとみに弟でも作ろうよ。」シャイな俺に麻美は声を上げて笑った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                          ~end




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