総長は、甘くて危険な吸血鬼
返事をする余裕もないほど、頭の中は胡桃のことと、朔の残した言葉でいっぱいだった。
足早に生徒会寮に駆け込んで、
その勢いのままロビーのソファーに胡桃を押し倒す。
『かっ、叶兎くんほんとに何──』
「あいつ…朔、お前はあいつの何?」
…落ち着いて話そうと思ってた。
二人きりになったら冷静に聞くつもりだった。
でも、目の前に胡桃がいて。
“朔に触れられた胡桃”を見たら、俺の理性なんか一瞬で吹き飛んだ。
胡桃が怯えた目で見上げてくる。
違う、そんな顔させたいんじゃない。
でも今の俺には優しく聞ける余裕なんて残ってなかった。
『朔…、は小さい頃の幼馴染で…でもさっきの朔、まるで別人みたいだった』
幼馴染…それで“くーちゃん”なんてあだ名で呼んでたのかあいつ
でもよりによってなんでBSの奴と…
『朔に、一緒にBLACK SKYのアジトにきてって言われて、断ったらいきなり血を吸われて…』
胡桃の右手を取ると、そこに赤い痕が残っていた。
噛み跡。まだ血がにじんでいる。