【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ



「……夢じゃないよ。」



あまりに強い力で抱きしめられるから、苦しくて思わず体が強張った。

その力強さに、何も言われなくてもどれだけ心配してくれていたかが伝わってくる。



「……………無事で……良かった…」



私の髪に顔を埋める叶兎くんの声は、消え入りそうなくらい細く、切なく震えている。


しばらくの間、叶兎くんは私を腕の中に抱きしめたまま、言葉もなくただ私のぬくもりを確かめるように静かに静止していた。



『…心配かけて、ごめんね…』



小さく謝ると、帰ってきたのは──。



「…………やだ」



まるで子供みたいに拗ねたような、短い言葉。



『えっ……やだって…』



叶兎くんはほんの一瞬だけ目を細めると、私の手を引き寄せ、自分の柔らかい頬にすりすりと押し当てた。

親指の腹が私の手の甲をやさしく撫で上げ、そこから熱がじんわりと全身へ広がっていく。



「…そっちからキスしてくれたら、許してあげてもいい」



いたずらに笑った叶兎くんの瞳がきらりと光って、上目遣いが色っぽく見えた。

反対の手はいつの間にか絡め取られていて、恋人繋ぎでがっつりと捕まえられている。



『な、なんでまた、いきなりそういう流れに…!!』

「いいじゃん。前もしてくれたでしょ?」



そういう問題じゃない…!

そもそも、ここ病院!!


だけど、どんどん叶兎くんの視線が強くなっていって、ついに心が折れそうになる。



「……何度も無茶するなって言ったのにさ。俺がどれだけ生きた心地がしなかったか……分かってんの?」



じっと見据えてくる視線は、叱るようで、泣きそうなほど切実で。


反論できるはずもなく、ただ胸が痛む。


……それは、ほんと、反省してます。



「なのにさ。目が覚めた瞬間から、そんな可愛いこと言い始めるから……叱る気なんて全部なくなっちゃったじゃん」



甘い言葉と一緒に、叶兎くんの指先が私の手の甲をなぞるように滑り、掌全体を覆うようにそっと持ち上げる。

指の動きの一つひとつが確信犯的に色っぽくて、私の息は反射的にどんどん浅くなっていってしまう。


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