【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
ボール……
私に向かって投げられた…?
「おい、他人事みたいな顔してんじゃねぇよ」
普段と違う、この前私を助けてくれた時と同じような、ドスの効いた低い声。
その場にいた全員がこの空気に凍りついた。
背筋がぞわっと震えて、誰もが動きを止める。
その叶兎くんの視線が向かう先は、
「え、なんで私達を見るの?投げたのアイツでしょ?ってか、たまたま軌道がぶれてボールが飛ぶことなんてよくあるじゃん」
少し離れたところにいた女子生徒4人組。
この前廊下で群がっていた子たちとはまた違う、派手な雰囲気の女子たちだった。
彼女たちが焦ったように指差した先には、確かに気まずそうに下を向く男子生徒。
けれど、叶兎くんの視線は一切ブレない。
冷酷な瞳で、その女子たちを逃さず射抜き続けている。
「どうせお前らが仕組んだんだろ、俺に隠し事が通用すると思ってんの?」
「っ…」
女子達が一瞬で言葉を失った。
叶兎くんの言葉は容赦がなく、逃げ場を塞ぐように迫ってくる。
「お前らが胡桃を見ながらコソコソ話してるの見えてたし、明らかにわざと投げてた。それにそいつがただ単に胡桃にボールを投げつけてもメリットなんてない。」
……やっぱり私、嫌われてるんだ。
少し仲良くなれるかもしれないって思ったばかりだったのに、
その気持ちがまた心の奥でぐしゃっと潰されていく。
「……はぁ。この際だから言うけど」
叶兎くんがため息をつき、体育館中に響き渡る声で告げた。
「胡桃に何かした奴は俺が許さない。相手が、俺が、“赤羽叶兎”だってことを忘れるな」
みんなの視線が一斉に、叶兎くんへと集まる。
生徒会長で、WhiteLilyの総長…