【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
「ん。人通りもほとんど無くて穴場の、俺のお気に入りの場所。胡桃に見せたかったから」
その声音に、心臓がまた跳ねた。
穴場なのに……私に教えちゃって大丈夫なの?
そんな疑問も浮かんだけれど、彼が「見せたい」と言ってくれた気持ちが嬉しかった。
『連れてきてくれてありがとう』
橋の途中でバイクを止め、私たちは手すりに並んで寄り添いながら、しばらく無言で夜景を眺めた。
キラキラと輝く街の明かりを見つめていると、学校での嫌なことや悩み事も全部消えていくような、そんな気持ちになってくる。
綺麗……。
私は転校してくる前、自然豊かな田舎に住んでいたから、こんな風に高い場所から都市の夜景を一望するなんて初めての経験だった。
冷たい夜風が頬を撫でていく。
二人だけで見つめる夜景は、静かで、心が澄んでいくみたいだった。
「胡桃、好きだよ」
『……え?』
今、…
振り向いた先で、叶兎くんは柔らかな目をしていた。
夜景が反射した綺麗な瞳に、息が止まりそうになる。
「俺は…血だけを目当てにお前と関わってる訳じゃない」
体育の時に、みんなの前でさらりと言った言葉。
あれは冗談なんかじゃなくて……。
…でも、私なんかのどこを?