私を、甘えさせてください
彼に内緒で選んだウエディングドレスを身にまとい、ヘアメイクも全て終わったところで、母が控室に入ってきた。


「・・素敵ねぇ。自分の娘とは思えないわ」


ほぅ、とため息をついて鏡越しにつぶやく。


「お姉ちゃん、おめでとう!」


続いて、葉月と香奈も来てくれた。


「みづきちゃん、きれ〜。おひめさまみたいだね〜」

「かな、ありがとう」

「おうじさまも、かっこよかったよ」

「そっかー」

「お姉ちゃん、お父さんすっごい緊張してたよ。私の時より緊張してるね」

「本当?」

「でもほら、お姉ちゃんのドレスは細身のマーメイドラインだから、裾を踏まれるなんてことは無いと思うよ」


そういえば葉月の結婚式の時、レースがたっぷり使われたプリンセスラインのドレスの裾を父が踏んでしまい、危うく葉月が転びそうになってたっけ・・・・。


「ふふっ、そうだったわねぇ。お父さんが冷や汗かいて、葉月が涙を拭くためのハンカチで、お父さんの汗を拭いたのよね」


昔話で盛り上がっていたところで、ドアをノックする音が聞こえた。


「新郎様がいらっしゃいました」

「じゃあね、美月。私たちは会場で待ってるわ」

「うん、お父さんによろしく」


すれ違いで、彼が控室に入ってくる。


「・・・・!」


その姿を見て、思わず立ち上がった。
そして彼も、足を止める。


私たちはどうしても時間が合わず、お互いのフロックコートとドレスを別々で選び、この瞬間まで見ることは無かったのだ。

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