私を、甘えさせてください
自宅へ送り届けてもらったのは、土曜のお昼をだいぶ過ぎてからだった。


「へぇ・・・・ここが美月の家か」

「空川さんのマンションに比べたら、すごく狭く感じるでしょ」


私は着替えながら、リビングにいる空川さんに声を掛けた。


「美月、まだマンション買う気ある?」

「んー、どうだろう。いい物件が出た時にまた考える。・・ね、それより、空川さんお腹空かない?」

「そういえば、朝から何も食べてなかったな」

「お蕎麦でも茹でる?」

「食べる! あ、でも、外に行くほうが楽なんじゃないか?」

「そうしたい時もあるけど、いまは家でゆっくりしたいから・・・・。つゆを作って、お蕎麦茹でるね」


キッチンに立って作り始めた私に、向かいのカウンターに座った空川さんが、頰づえをついて話しかけてくる。


「俺さ、日曜の夜まで一緒にいたいって言ったものの、実際、丸2日も何するんだ?って思ったりしたわけだよ」

「ふふ。2日間、ずっと抱き合ってるわけにもいかないしね」

「そう。かといって、買い物したり食事したり、ずっと外でエスコートするのは正直うんざり。疲れるよ。
だけど、そうされるのを望む女性もいるし」

「しょうがないよ。望まれるようなスペックなんだから。カッコよくて、それなりの地位にいて、お金も持ってるだろうし。

ね、お蕎麦の具材どうしようか? シンプルにきつねそばにする? それとも肉そばがいいかな?」

「えー、どっちも食べたいってアリ?」

「いいよ。そんなに手間じゃない」

「やった! ね、美月。いま俺のことカッコいいって言ったよね?」

「ん? 言ったかな?」


『言ったよ』と、私のすぐ後ろに立ち、顎をすくってキスをする。


「俺、ずっと美月といたい・・・・」


耳元でそうささやかれ、くすぐったかった。

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