私を、甘えさせてください
彼が私の家で暮らし始めてから、『おかえり』のキスを始めた。

最初は単純に、帰って来た時に顔を見たらキスしたくなったというだけで。


彼は、これがとてもお気に入りらしく。
なんだか習慣になってしまった。

『いってらっしゃい』のキスより、何倍も威力があるのだと言う。


「あれはヤバイな」

「ヤバイ?」

「日によっては、もうその場で抱きたくなるから」


カァーッと頬に血が昇る。

実際に昨日、玄関で押し倒されて・・。


「思い出しちゃった? でも本当に、本能的に止められない時があるんだよ」

「やだ・・もぅ」


距離を縮めれば縮めるほど、どうしようもなく好きになっていく。

まさか年齢を重ねてから、こんなふうに誰かを強く想うなんて想像もしていなかった。


それは、彼も感じているようだった。


「こんなこと言うのもどうかと思うけど、ずっとひとりが気楽でいいって考えてた。
俺は俺でやりたいことがあって、邪魔されたくなかったしね。
でもさ、俺、いま人生で一番幸せなんじゃないかな」


のんびりとソファに座って、マグカップ片手におしゃべりをすることさえ、私たちにとってはとても癒される時間だった。


「美月の嬉しそうな顔見ると、俺、本当に何でもしてやりたくなるんだ。
夜中とか明け方、眠ってる美月を抱き寄せる度に、俺が死ぬまで守ってやりたいっていつも思う。

俺、もう一生分、美月を泣かせた自覚あるから・・・・それでも俺を選んでくれるなら、一生かけて幸せにしたいよね」


言葉が出てこなかった。
応える言葉が、見つからなかった。


それでも、身体は正直で。
心は、素直に受け取っていて。


ほろりと、涙を押し出していた。

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