私を、甘えさせてください
もう少し若い頃の私なら、空川 和真のようなタイプが好きだったと思う。

単純に歳を重ねたのか、好みが変わったのか。

ああいった男性が持つ危うさというか、スリリングさに、振り回されたくないと思うようになっていた。

擦り減って、疲れ切ってしまうから。


私は、拓真が好き。
穏やかに包み込んでくれる、彼が好き。


「拓真」

「ん?」

「どこにも・・行かないで・・」

「えっ」

「ずっと・・私のそばにいて・・」

「美月・・」


他の誰のところにも行ってほしくないのは、私も同じだった。

彼の胸に耳をあて、ドクッドクッと規則的な鼓動の音を聞いていると、それだけでなんだかホッとした。


「美月がそんなこと言うなんて思わなかった」

「・・・・」

「もうさ、どれだけ好きにさせるつもり?」


見上げた先にあった彼の笑顔に、なんだかきゅんとした。


「そんなの・・私だって同じだから・・。
どんどん好きになって、怖くて、他の誰のところにも行ってほしくないって思ってる」


「美月・・俺、心臓止まるかも・・俺がキュン死したら美月のせいだぞ」

「キュン死って・・」


ふたりで顔を見合わせて笑った。

< 73 / 102 >

この作品をシェア

pagetop