溺れる遺伝子

洗脳

…今のうちに慣れていったほうがいい…

…今のうちに慣れていったほうがいい…



「今のうちに慣れとけってこと。」

鏡の前で呆然とするヒナにツバサが笑いながら言った。


真新しいブレザーに合わない明るすぎる髪の色。
長くてサラサラの筈だったヒナの髪の毛はショートに近い長さになっていた。


「デビューだ。」


楽しそうにヒナの髪の毛を変貌させるツバサは楽しそうだった。


「ついでにスカートも。」

ジャキッ…ジャキッ…


ハサミの音が生々しい。


規定の丈は膝丈なのに、ツバサは容赦なくその規定丈にハサミを入れる。

こんな恰好で学校に行けば目の敵にされるのは間違いないだろう。


せめて親がツバサの暴走をとめてくれればいいのだが、母はヒナの姿を見るなり


「あら、不良になったのね」

と冷たく言い放つだけだった。



「いいか、あんな風にだけはなるなよ」

義父は弟や妹にそっと耳打ちした。
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