貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
 久々の再会になるが、ゲルハルトは以前からあまり変わっていなかった。

 銀糸で刺繍された黒い服は相変わらず彼のすらりとした長身を際立たせている。

 頭の上で戸惑いを示すように揺れる耳も、座った彼が背もたれと自身で挟み込んでいる尾も、ナディアが見た時と変わらない獣人のものだ。

 藍色の瞳がナディアを捉えてから、玉座よりも一段下で控える白髪の男に移る。

「エセル、どういうことだ」

 エセルと呼ばれた白髪の男は、ナディアを捧げるように控えた人間たちを見て目を細めた。

 長い白髪は縛らずに腰まで流しており、瞳は血に濡れたように赤い。色が白く面長で、口もとには微笑が浮かんでいる。

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