政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜


「今日は十八時から会食の予定が入ってる。父も一緒だから、遅くならないと思う」


 九時五分前。及川さんが到着する時間を見計らい、拓人さんは玄関へと向かう。


「お義父様と一緒に。わかりました」


 お義父様はお酒に大変弱く、それは広く周知されている。

 そのため相手方が気を使って、何軒もお酒を飲むような会食にはならないという。暗黙の了解みたいなものだ。

 だから、お義父様と共にする会食は非常に健全だと拓人さんが言っていた。


「詳しい時間はまた追って知らせる」


 仕事で忙しいのに、拓人さんは私への連絡は欠かさずしてくれている。

 家を空けることが多いぶん、私が不安にならないようにしたいと結婚当初話していた。それは今も変わらず守ってくれている。大事にしてもらっているなと感じられる事柄のひとつだ。


「はい。今日も頑張ってください」


 靴を履き、ドアを開けた拓人さんを追って出て行く。

 拓人さんがドアを出ていったところで、外で「やっぱり拓人じゃない!」と弾んだ声が聞こえた。

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