政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜


「他にもね、挙げたらキリがないんだけど、バレンタインなんかは拓人に渡したくてそわそわしてる子がたくさんいたりして。だから、友達だった私は気軽に渡せてちょっと優越感だったり。ね? 女の子たちが次から次へと話しかけてきて」


 早苗さんは楽しそうに思い出話を語る。

 拓人さんは「もういいだろ。昔の話は」と話題を終わらせたがっていた。

 許婚という関係でいたものの、拓人さんの学生時代の様子などはよく知らない。

 拓人さん自身とも年に一度程度しか会わない関係であったから、お互いに結婚前のことは知らないことのほうが多いのだ。

 自分の過去話をされて居心地が悪かったのか、拓人さんはケーキを食べ終えると食器を片付けに立ち上がる。


「拓人、いいから」


 そのあとを早苗さんが追い、ふたりでキッチンのほうに行ってしまった。

 なんか、私ではなく早苗さんが奥さんみたい。

 ふたりの様子に、ふとそんなことを思ってしまう。

 向こうにいる早苗さんは、拓人さんを呼びキッチンの中に入っていく。

 ワインの瓶を何本かカウンターに出し、何やらふたりで話しこみ始めた。

< 34 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop