政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜


 今日はこれから料理教室に行くとメッセージにあった。

 俺の帰宅があるとなれば、夕食の準備や何やらできっと急がせてしまう。

 しなくていいと言ってもいつも万端の体制で待っているのが茉莉花だ。

 明日帰ってくると思っていたのに、急に今晩帰ってくるとなれば慌てるに違いない。


「いや、なんでもない。今夜はこっちで過ごす」


 茉莉花にだって、ゆっくり自分ひとりで過ごせる時間は必要だ。

 俺のことを気にせず、自分のために使う自由な時間が。

 及川は「承知しました」と言い、明日のスケジュールについて確認を取る。


「では、何かありましたらお呼びください」

 そう言い、立ち去っていった。


【お疲れ様。こっちも今日の仕事は終わった。プリン、明日帰ってもまだ食べられるかな?】


 ホテルのロビーラウンジの一角でメッセージの返信をしていたときだった。


「拓人?」


 下の名前で呼びかけられ、顔を上げて見えた顔に思わず目を丸くしていた。

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