政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜
「すみません、じっと見つめて」
「あ、いえ」
どこか変だろうかと気になった矢先、隆史さんがふふっと笑った。
「いや、なんか今日は一段と美しいなと。つい見惚れて」
「えっ」
突然何を言うのかとビックリして反応に困る。
お世辞とわかっていても内容的に落ち着けない。
「いえ、そんなことは……」
間が持たず、早く着いてくれと思ったタイミングでエレベーターが二十七階に到着した。
「あ、今日、早苗さんが拓人さんのところを訪れると聞いてます」
開いたエレベーターを先に降りるように隆史さんに促される。
「ああ、そうみたいですね」
「早苗さんの会社にも、拓人さんの会社にも、お互いに利益がある仕事ができるといいですね」
今日の打ち合わせはどうだったのだろうか? 良い話はできただろうか?
少し前の私なら、こんな心穏やかに拓人さんと早苗さんが会うことを考えられなかった。
それが例え、今日のように仕事だったとしても。
会ってどんな話をして、何回笑い合ったのか、そんなことでさえ気になってしまっただろう。