国際弁護士はママとベビーに最愛を誓う~婚姻解消するはずが、旦那様の独占欲で囲われました~
でも、もし久嗣が「渡さない」と言ったら? よく考えたら今の私には収入がないし、弁護士として大手に勤めている久嗣の方が社会的な信用は高い。
ベビーシッターや代行サービスをいくらでも雇えるお金があるし、そもそも親権を争うなんてことになったらそれが本業の久嗣に勝てるはずがない。

心臓が不穏な音を立て、やがて痛みだした。
そんなことになったら、どうしたらいいの?
眠る凌太の体を持ち上げ、胸の中に抱きしめた。誰にも渡さない。凌太と一緒にいたい。久嗣とともに凌太も失うことになるなんて、私は耐えられない。
「凌太を連れていかないで、久嗣……」
久嗣が帰ってくるのが怖い。痛む胸に苦しみながら、凌太の前では笑顔で過ごした。

「……ただいま」
午後八時。久嗣が帰宅し、スーツのまま寝室へ入ってきた。
「おかえり」
私はまだ凌太の寝かしつけの最中で、ダウンライトをひとつだけつけた薄暗い寝室で大きなベッドに横になっていた。
私の腕枕で凌太はうとうととした目を細め、父親の帰りを「パ!」と言葉を発して喜んでいる。
久嗣はうっすらと微笑んでこちらへ近づくと、凌太の頭に手を伸ばして「ただいま」と小さくつぶやいた。
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