国際弁護士はママとベビーに最愛を誓う~婚姻解消するはずが、旦那様の独占欲で囲われました~



そして結婚してから仕事漬けの生活になった俺には、玲菜と凌太とまともに触れ合る時間がなくなった。しかしリミットまで、あと少しがんばれば、待ち望んだ生活が待っている。それだけを拠り所にしてやってきたのに。すでに玲菜の愛情が尽きていたことに気付けなかった。

今夜も三人で川の字になったが、悩みすぎて寝付けずにいる。玲菜と凌太は疲れたのかふたりで抱き合って寝息を立てていた。
凌太を挟んで俺の方に向けられている玲菜の頬を指でなぞると、「ん」と声を出し、彼女は緩んだ笑顔になる。無意識なんだろうか。起きているときはもう玲菜の笑っている顔は見られないのかと思うと、しばらく手を放せずにいた。

次に凌太に目を移す。胸を締め付けられる感覚が増していく。生まれてからちゃんと成長を見てこれなかったから、約束の一歳を迎えた後、一緒にいられるのが楽しみだった。
玲菜の、当然に凌太を連れて行く、と言わんばかりの言葉を思い出すと、自動的に脳内では親権について俺が有利になるやり方がいくつも浮かんだ。
そんなことを考えても意味がない。どうしても、三人でいたいんだ。皮肉にも、それだけは法律で解決できない。

抱き合うふたりに手を伸ばし、そっと抱き締めた。
細い玲菜の体と、柔らかくて小さい凌太が収まると、目頭が熱くなった。

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