Dear my girl

7.


 沙也子が腕時計を確認すると、予鈴が鳴る5分前だった。大槻やよいに声をかける。

「そろそろ戻ろうか」

「はい、朝からありがとうござい……」

 大槻が真っ青になって固まってしまったので、沙也子は不思議に思いながらも振り向いた。
 そこには、一孝と黒川がいた。
 思わず目を丸くすると、男子二人は、ばつの悪そうな顔をした。

「ごめん……! 立ち聞きするつもりじゃなかったんだ。俺、谷口さんに謝りたくて、涼元にも事情を話して探してたんだ」

 黒川が勢いよく頭を下げる。
 沙也子は状況について行けずにいた。黒川の印象がずいぶん違うことにも戸惑った。

「わ、わたし?」

「この間、ひどいこと言ってごめん。今はもう時間がないからさ、悪いけど、放課後にでも話を聞いてくれないかな」

 そんな黒川を一孝は見やり、しれっと言った。

「谷口、聞かなくてもいいよ。もう1発殴っとくから」

「ええっ」

 よく見れば黒川の左頬が腫れている。
 大槻は口から泡でも吹きそうな様子でガタガタと震えた。

「ひ、う……、あ、あの、す、涼元くん。か、勝手に、谷口さんに、すみませ……、わたし、後で謝りに行こうと……、ほんと、です……」

 気の毒になるほど怯えていて、まるで狼に睨まれたうさぎのようだった。
 一孝は「取って食ったりしねーよ」と呆れた声を出した。

「本当のことだし、謝らなくていい」

「は、はい……っ」

 そのとき予鈴のチャイムが鳴り響いた。
 慌ただしく教室に向かうことで、それどころではなくなり、4人の気まずい空気は消えていた。

< 27 / 164 >

この作品をシェア

pagetop