春色の恋−カナコ−[完]
「今日は疲れたでしょう?カナコちゃん頑張っていたし」

「そんなこと!河合さんの方が疲れたでしょう?重いもの沢山運んでくれてとても助かりました」

家の中の引っ越しだけど、重い荷物を持っての階段の上り下りは大変な作業だったはず。

促されるままにソファに座り、エアコンをつけている河合さんに見とれていた。

「そんなに見つめられると、穴が開きそうだね」

「えっ!」

くすくすと笑いながらも、私の横へ来て頭をぽんぽん、となでてくれた。

「何か飲む?コーヒー入れるけど」

「あ、私がやりますよ」

二人でキッチンへ向かい、電気ケトルでお湯を沸かしながら今日の話でもりあがった。

疲れたけど、無事に終わったこと。

これでいつ両親の荷物がアメリカから届いても、収納することができそう。

冷蔵庫にあるもので簡単に食事も済ませて、お互いシャワーを浴びてから再びソファに座ってのんびり話なんてして。

最近忙しくて、ゆっくり落ち着いて話をすることもなかったんだと実感できるくらい、他愛もない内容だけどとにかくずっと途切れることなく話をしていた。

「もうこんな時間だね。疲れただろう?」

ふと時計を見ると、いつの間にか日付が変わっていて。

時間がたつのも忘れて話し込んでいたんだ。

私よりも、昨日も遅くまで仕事をしていた河合さんの方が疲れているはずなのに。

「ごめんなさい、すっかり話しこんじゃって…」

申し訳なくて、隣にいる河合さんのシャツの袖をぎゅっと握りしめた。
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